学研 大人の科学 真空管ラジオキットの改造

キット発売日の前日(3月24日)に神田の三省堂書店(自遊時間店)に置いてあるのを発見!
いそいそと買って帰って組み立てました。

組みあがり、暫く聞いていると・・・・

  ・音が小さいなあ・・・ラジオ工房の内尾さんが「トランスを替えれば・・・」と言ってたなあ。

  ・006Pを5個も使うとなるとコストもゴミも膨らむなあ。

と言うようなことが、頭に浮かんで離れません。

それならばということで、早速改造に着手するこにしました。


1.音量アップ (できれば音質も)

まずは、実験。代替となるトランス探しですが、手持ちのラジオのトランスを外すのは面倒だし・・・そうそう、ありました、6V:100Vの電源トランスが。以前、3Vの電源を作ろうと思って買っておいたやつです。(また後で出てきますので写真は割愛)

学研のホームページのFAQでは「5KΩ:8Ω程度のトランスと交換してください」と書いてあり、巻き線比は、(5000÷8)^0.5=25。このトランスの6V端子で16.6、3Vのセンタータップで33.3。まあ、実験としては使えるでしょう。
で、早速接続して聞いてみると、耳で聞いた限りですが「音量がアップしている」ではありませんか。やはり、内尾さんの言うことは正しかった。(なお、3V端子に繋いだ時の方が良好でした)

でも、この大きさでは、収まらないし(元々実験用ですし)・・・となるとやはり・・・秋葉原へ。

ところが、なかなか良いものがありません。大きいものならあるのですが。そこで、いつもお世話になっているラジオデパート3F シオヤ無線を覗くと・・・ありました!丁度良いトランスが。

規格は、10KΩ:8Ω。(見つけた時点で、スピーカ交換も決定)
大きさはキットのトランスの1.5倍くらいでしょうか。
この大きさなら、ケースにもはいるでしょう。

価格:240円

さて、トランスは手に入ったけれど、このトランスに合うスピーカーを探さなければなりません。(キットの16Ωのスピーカーを使う手もありますが、1次側のインピーダンスが20KΩでは気持ち悪いですし)
で、見つけました。ラジオストアーのコイズミ無線で。

右側が見つけたスピーカーです。
規格は、8Ω 0.5W 28mmm
品番は、S28G10K-8
TOPTONE(東京コーン紙製作所)と言うメーカーのスピーカーです。

価格:420円

これで部品は揃いました。家に戻り、早速交換です。

基盤に穴を開けて裏側から取り付けました。
ケースにも余裕で収まりますし、バッチリです。

※基板上の橙色の線は、3S4を五極管接続するために配線した線です。交換前は三極管接続の方が良い感じでしたが、交換後は五極管接続の方が音量が増した感じがしたので、そのままにしてあります。
このことはまた後日、追いかけてみようかと思っています。

( 表です)

スピーカも取り付けました。(厚みがキットのスピーカーの半分ぐらいでしたので、隙間にゴム板を切って挟んであります)

この組み合わせで聞いた感じは・・・かなりの音量アップです!!(音質も)
やかましい位に鳴ります。改造内容を知らない妻が「他のラジオと変わらないじゃない。どおしたの?」といったくらいですから。(低音はさすがに出ませんし、音質は良くなったとはいえ、そこは再生検波の音ですが)

※この後暫くすると、ハウリングを起こしやすくなっていることに気がつきました。そこで、スピーカーの後ろ側だけにゴムを挟むのをやめ、前面にもリング状に切ったゴムを挟むようにしてみました。
これで、ハウリングは起き難くなたようです。


2.電源改造 - パート1 (ロイヤー回路の出現)

さあ、次は電源です。「他に2台真空管ラジオ/1台トランジスタラジオがあり、常用するわけではないのだから、そのままでいいじゃないか」という心の声を無視して開始です!

そこでまずは、方針を決めなければなりません。
完成したこのラジオを見てると、どうにも電源コードが付いた姿は重たく感じますし、トランス等からのハムも気になります。

と言うことで、電池を昇圧することに決めました!!(前述の電源トランスを発見したときから決めていましたが・・・ハハ)

早速、Webを嗅ぎ回りますと・・・ありました!川端さんと言う方が色々やっていらっしゃいます。->真空管式ポケットラジオ プロジェクト
この中に記述されているロイヤー回路を第一候補とします。->DC-DCコンバータについて

また、良く使われる?不安定マルチバイブレータを第二候補とします。

さてこの二つを定数を変更しながら試しましたが、今回使ったトランスでは、第一候補のロイヤー回路に軍配があがしました。


このトランスが出力トランスの実験としても活躍したトランスです。
(トヨデンSELのPK-06016)
ロイヤー回路
※006Pの入る部分の幅より若干大きいため、プラスチック部分を少々削ってあります。
※トランジスタは手持ちの2SC1815を使っています。(2SA950では1.5Vでは上手く発振せず、2SA970に代えると発振しましたが今度は3Vで発振しなくなりました)

真空管ラジオキットに接続した時の特性は以下のとおりです。

出力電圧: 27.8V
出力電流: 2.4mA

入力電圧: 1.51V (マンガン電池)
消費電流: 101mA

発振周波数: 28.8Hz(これなら、ヒータの電源と共用しても電池側のフィルタ回路はいらないかも)

これから換算する変換効率は、44%と予想より少し高くなっています。

肝心のラジオの動作はといいますと、ちゃんと発振し受信できます。
音量は小さくなりましたが、トランスとスピーカーを替えたせいで、オリジナルの時と同じくらいの音量は出ています。

これで、一応OKかなとも思いましたが、やはり、もう少し音量が欲しいところです。

アルカリ電池に替えれば内部抵抗が下がってもう少し電圧が上がるかもしれませんが、これ以上電池にお金を掛けるのはもったいないですし。(それ以上に部品代に掛かっていることは気にならないのですが・・・ハハ)

入力電圧を上げればいいかなと、電池を2個直列にして繋いだところ、48V -7.4mAと006P以上の状態になりましたが、そうすると、電池をヒーターと共用にしにくくなりますし悩むところです。

それに、このロイヤー回路としてのまあまあの変換効率と低い発振周波数は捨てがたい・・・

と言うことで、パート2に続きます。


3.電源改造 - パート2 (スイッチング・レギュレータの台頭)

さて、回路をもう少しいじくってみるか、それともトランスに手を入れてみるかなどと悩んでいると・・・

「そうだ!スイッチング・レギュレータを試してみるのはどうだ? まあ、ノイズはあると思うが、もしかしたら使えるかも。そうすりゃ、”軽い/小さい/安い”の三拍子が得られるんじゃないか」という心の声が響き渡ってきました。ということで・・・・秋葉原へ。

お目当てはTL499ACPというスイッチング・レギュレータ用ICです。ラジオ会館4F若松通商に行きますと、ありましたありました、157円です。(もちろん、下調べして行きました。"大人"ですから、思い立ったからといって闇雲に飛び出すようなまねはしません)

そして出来上がったのがこれです。

TL499ACPは入力が1.1V〜10V、出力が2.9V〜35Vと今回の目的にピッタリのICです。

性能はと言いますと・・・いいですねえ、これ。開放時に測定した電圧が、負荷を接続したときも変わらずに出力されます。前述のロイヤー回路と比べ、レギュレーションは雲泥の差です。
TL499ACP
※ICとコイル以外は手持ちの部品を使っています。コイルは、74μHのものを買ってきましたが、50μH〜150μHで直流抵抗の低いものであれば使えるようです。詳しくは->TL499A PDF資料

出力を定格ギリギリの35Vに調整してキットに接続してみました。

結果は・・・「ザーーーー」・・・砂の嵐音状態です。ノイズです、それも受信周波数帯域全域に及ぶ、「優秀なノイズ」です。ラジオに近づけると増大し、アンテナに近づけるとさらに増大して「グァーーー」です。

コイルの両端で周波数を図ると約2KHzですが、さすがスイッチング・レギュレータ。周波数の範囲が広いですねえ。これを実用レベルまで取り除くとなると・・・シールドやら出力側/入力側のフィルタやらを加えたとして・・・キットはプラスチックの塊ですから、とても出来そうに思えませんから、出来ないでしょう。(懐かしいマフィーの法則が頭をよぎります)

この回路をラジオのケース内に組み込むのをやめて、離せば何とかなるかもしれませんが、それじゃあ何のための電池昇圧か分かりません。

と言うことで、パート3に続きます。


4.電源改造 - パート3 (ロイヤー回路の逆襲)

スイッチング・レギュレータのレギュレーションの良さに後ろ髪は引かれながらも、やはりここはトランスを絡めてやってみるかと腹をくくりました。

だが、そうは言ってもトランスを改造するには、コアがしっかりワニスで固められているようで分解するのは大変そうですし、トランスを改造するとなると一般的?では無くなるし。などと悩んでいると、ふと思い立ちました。

「そうだ整流部分を倍電圧整流回路に置き換えたら何か良いことあるんじゃないか?」と。

冷静に考えればレギュレーションの悪い電源の電圧を小手先の業で上げたところで結局は同じ状態に落ち付くことは見えているわけですが、ここはだまされたと思ってやってみることにしました。(誰がだましているのかはここでは問題ではありません)

早速やってみると(簡単な回路なのでやってみる気になったのですが)、

出力電圧: 30.2V
出力電流: 2.7mA
倍電圧整流

※原理はこちら->倍電圧整流

おおお!少し改善したではありませんか!やってみるものですね。善は急げ、百聞は一見にしかずです。

この結果に勢いを得、考えついて作ったのが以下の写真です。

double trans

そうです。やってしまいました、ダブル・ロイヤー回路です!
原理?は簡単です。ロイヤー回路の出力を直列につないだだけです。倍電圧整流と同様に良いことがあるんじゃないかという発想です。
ダブル・ロイヤー回路
見た目もなかなかです。(自己満足)
妻も、「焼きあがったパンが釜から出てきたみたい」などと言って喜んで?います。

しかし、回路が面白くても、見た目が良くても、結果が出なければ単なる部品の”大人買い"だと笑われてしまいます。

ドキドキしながらキットに接続してみますと・・・ (まずは抵抗をつないで測定などと悠長な事は言ってられません)

出力電圧: 36.5V
出力電流: 4.1mA

おおおお!ほぼ満足の行く値です。(というよりは、これで満足です・・・ハハ)
音もしっかり出ています。
(この後、並列でもやってみましたが、倍電圧整流程度の効果でした)


さて、これを006Pの入っている部分に収めるわけですが、本体とどのように接続するか・・・

あまり、本体に手を加えたく無いですし、できれば、006Pでも聞けるままにしておきたいですし・・・

と言うことで、パート4に続きます。

5. ・・・ちょっとここで、一休み (ツールを作ってしまいました)

今回のキット改造ページの作成にあたり、初めて回路エディタ BSch3V (水魚堂 岡田氏作)を使いました。
パーツ情報も豊富で(色々な方がパーツを作成しています)、このページの回路図も簡単に作成することが出来、非常に助かりました。

ただ、使っているうちに「パーツを配置するのが少し面倒くさいな・・・」ということが頭から離れなくなりまして、じゃっていうことで作ってしまいました!

パーツドラッグ&ドロップで回路図エディタ BSch3Vに配置するためのツールです。

操作は簡単です。好きなパーツライブラリとパーツを選択後、ドラッグしてBSChV3の回路図エリアにドロップするだけです。

BSch3Vに倣いまして、GPL扱いにしソースも公開します。

使ってみたい方は、以下からダウンロードしてください。
※ドラッグ&ドロップに対応させたBSch3V.exeも含まれています。
※詳しくはLZHファイルに含まれる、README_PD.TXTを見てください。

パーツ・ドロッパー V1.00(pdrop100.lzh 631,356bytes)のダウンロード

早くもバージョンをアップしました。2回目以降の起動が早くなります。

パーツ・ドロッパー V1.01(pdrop101.lzh 637,160bytes)のダウンロード

BSchV3 Version0.43に対応しました。

パーツ・ドロッパー V1.01(pdrop101_043.lzh 647,114bytes)のダウンロード

BSchV3 Version0.47aに対応しました。

パーツ・ドロッパー V1.01(pdrop101_047a.lzh 651,131bytes)のダウンロード

BSchV3 Version0.52に対応しました。(V051eへの対応は不十分でした。こちらに置き換えて使ってください)

パーツ・ドロッパー V1.02(pdrop102_052.lzh 702,515bytes)のダウンロード

 

   

と言うことで、今度こそパート4に続きます。

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※回路図の作成には水魚堂 BSch3Vを使用しています